朝起きて、支度して、電車に揺られて会社に行く。そんなことしなくても、おうちにいながら仕事ができる在宅ワーク。ITの発達なんかも手伝って、日本社会にも浸透しつつある新しい働き方だ。
そしてなんと、医療にも在宅の時代がやってきた。おうちから出なくても仕事できるし、治療も受けられる。なんて引きこもりに優しい世界なんだろう。
熱を出したときなんかに病院に行って診察してもらう「外来」、手術や検査のために病院に入る「入院」。この外来、入院に次いで「第3の医療のかたち」と言われるのが「在宅医療」。読んで字のごとく、自宅にいながら治療が受けられるというものだ。
1950年代には約8割の人が自宅で亡くなっていたのに対し、2008年には逆に約8割が病院で亡くなるようになった。
この事態を重く見た厚生労働省により、推進されるようになった在宅医療。定期的にお医者さんがおうちに来てくれる「訪問診療」、具合が悪いときだけお医者さんに来てもらう「往診」の2つの形があり、患者さん自身の価値観やライフスタイル、症状に合わせて選択するという形になる。
在宅医療の利用者となるのは「1人で通院するのが難しい」という問題や「住み慣れた家で最期を迎えたい」という思いを抱えた患者さん。つまり、僕みたいな引きこもりのための医療というわけでは全くないわけだ。
病院くらいちゃんと行けって話ですね。すみませんでした。
長年住み慣れた家で家族と一緒に過ごせることや、病院まで行く手間や労力が省けることなど、患者さん側のメリットが大きい在宅医療。しかし医療従事者の側から見ると、病院から持ち出せる機材しか使えなかったり、患者さんの容態が急変したときにすぐ駆けつけるのが難しかったりといったデメリットも大きい。
そんなときに活躍するのが、IoTだ。
IoTについて詳しくはコチラの記事をどうぞ:IoT – IoTは、人と猫とをつなぐ架け橋になれるか?
株式会社インテグリティ・ヘルスケアが提供する遠隔診療サービス『YaDoc(ヤードック)』。
ビデオチャットを用いて患者さんの表情・声色などの情報から診察する「オンライン診療」、スマートフォンで患者さんのバイタルサイン(血圧・脈拍数・呼吸速度・体温など)を確認できる「モニタリング」、患者さんがスマートフォンで入力した症状をオンラインで確認できる「オンライン問診」といった機能で、在宅医療に携わる医療従事者をサポートするIoTサービスだ。
患者さんがおうちから出なくても、お医者さんが病院から出なくても診察ができる。便利な世の中になったね、本当に。
薬局でもらうお薬手帳。持っていくのを忘れたりなくしたりして、毎回薬剤師さんに怒られる…なんて人も多いんじゃないだろうか。奇遇だね、僕もだよ。
そんな人にぜひ活用してほしいのがお薬手帳アプリ。現在使用中の薬の情報や、過去に処方された薬などの情報をスマートフォンで管理できる優れものだ。飲み忘れ防止のアラーム機能やバックアップ機能など、紙の手帳にはない機能も充実している。これでもう薬剤師さんに怒られなくてすむね。
在宅医療を担う職業は医者と看護師だけじゃない。さまざまな職種の人たちが関わって、在宅医療サービスは支えられている。ここでその一部を紹介しよう。
管理栄養士の中でも、在宅医療を受けている患者さんの栄養食事指導をするお仕事。在宅医療に関わる他の職種とも連携を取りつつ、患者さんひとりひとりの病気や症状・栄養状態に合わせた指導を行う。
参考:公益社団法人日本栄養士会
医療・看護・介護・福祉・保健に精通した看護師・ソーシャルワーカーから選ばれる。在宅医療を行うにあたって起こるかもしれない障害を予測し、適宜対応することが求められる職種。
看護師歴や看取りの経験数・協調性などの基準を満たしていないとなれないんだって。
参考:日本在宅ホスピス協会 トータルヘルスプランナーの認定について
PAはPhysician Assistantの略。医師の監督の下、簡単な診断や薬の処方・手術の補助など、医療行為の一部を補助する医療資格者のことをいう。
在宅医療PAは、在宅医療に携わる医療従事者と患者さんとの橋渡し的存在。東京都板橋区にある診療所『やまと診療所』が、アメリカのPA制度を参考にして独自に創設した仕組みなんだとか。
参考:やまと診療所
『アドバイスケアプランニング(ACP)』という言葉がある。
「患者さんの意思決定能力が落ちてしまう前に、受けたい治療や受けたくない治療、大切にしている価値観などを大切な人たちと話し合っておく」ことを意味する言葉で、「もしものための話し合い」なんて言ったりもする。
大事なことなんだけど、なんとなくそんな話をするのはまだ早いんじゃないかとか、縁起でもないとか、気が引けるっていう人も多いかもしれない。そんなあなたのために生まれたのが『もしバナゲーム』だ。「もしものための話し合いゲーム」略して『もしバナゲーム』だ。
『もしバナゲーム』は、人がその死の間際に「大事なこと」としてよく口にする言葉が書かれた35枚のカード+ワイルドカード1枚からなるカードゲーム。患者さんとその周りの人が「患者さん自身の希望や価値観」について話し合うきっかけをつくることが『もしバナゲーム』のねらいだ。
「終活」なんて言葉も生まれたこの時代。在宅医療の発達もあって、最期を迎える場所を自分で選択することも可能になってきている。
「どう終えるか」について考えることも、「どう生きるか」について考えるのと同じくらい大事なのかもしれない。
もっと詳しく知りたいって人にはこちら。在宅医療についてのパンフレットがダウンロードできるよ。
一般社団法人名古屋市医師会 在宅医療支援センター