三種の神器のひとつ『草薙剣(くさなぎのつるぎ)』、またそれをご神体とする熱田大神(あつたのおおかみ)を祀る神社、熱田神宮。
「神も仏も信じない」と言われたあの織田信長が戦勝祈願に訪れたという逸話も残る、全国的にも有名な神社だ。2018年9月にリニューアルした熱田神宮会館は、その厳かな雰囲気から結婚式や披露宴の会場として人気を集めている。あと名古屋コーチンがいる。
そんな熱田神宮に祀られている熱田大神は、草薙剣の神霊であると同時に天照大神と同一神だとも言われている。天照大神といえばご存知、日本最強クラスの神様だ。
そんな最強の神様があらせられる熱田神宮は、古来から数々の事件の舞台となってきた。その事件の一部をご紹介しよう。
↑事件のあと、開かずの門となった清雪門
(画像引用元:清雪門(せいせつもん)| 熱田神宮)
むかしむかし、草薙剣を熱田神宮から盗み出そうとした不届き者がいた。その名は道行。新羅(今の中国)からやってきた僧侶だった。
道行は首尾よく草薙剣を盗み出すも、伊勢あたりまで来たところで草薙剣が勝手に逃げ出し(?!)、熱田神宮へと帰っていってしまった。
そんな怪奇現象を目の当たりにしてもめげない道行さん、もう一度草薙剣を盗み出して摂津国(現在の大阪あたり)から新羅へ向けて出港した。今度こそやってやったぜ!と思いきや、草薙剣と道行さんを乗せた船は海難に遭い、難波(同じく現在の大阪)に漂着してしまう。
なんとか命は助かったものの『これはあかんわ』と思った道行さん、草薙剣をポイ捨てして逃げようとする。しかし今度は『置いてかないでダーリン』とでも言わんばかりに身から離れない草薙剣。
すべてを諦めた道行さんはとうとう自首し、死罪に処されることとなる。
ちなみに、草薙剣を盗んだ道行が通ったという清雪門はこの事件以来「もう神剣を外に出さない」という意味を込め、開かずの門になっているんだとか。
ある日のこと、唐の玄宗皇帝はこう思った。「そうだ、日本滅ぼそう。」
この皇帝さまの唐突かつ荒唐無稽(唐だけに)な思いつきに「ヤバい!」と焦った日本の神々は、とある作戦を立てる。
それは、「熱田大神が楊家の娘に生まれ変わり(!?)美しい貴婦人(=楊貴妃)となって玄宗皇帝をたぶらかし、日本侵略どころじゃなくさせる」というもの。
さすが神様、発想がダイナミック。この雑大胆な作戦は見事成功し、楊貴妃に夢中になった玄宗皇帝は日本への侵攻をとりやめた。
マジか。チョロすぎないか玄宗皇帝。あとよく間に合ったな楊貴妃。あれかな、成長スピードがかぐや姫だったのかな。3か月後には年頃の娘に成長してました的な。
ていうか、いくら国を守るためとはいえ、日本最強クラスの神様が国を空けるってどうなんだ?ほかの神様じゃダメだったのか?実は熱田大神が美女になりたかっただけなのでは?
ちなみに、熱田神宮には楊貴妃のために作られた石塔の一部と言われる石が残っている。
「この石に3回水をかけてお願いすると叶う」とか、「この石がある泉の水で肌を洗うと綺麗になる」といった素敵なご利益があるんだとか。楊貴妃パワーすごい。さすがは傾国の美女。
きよめ餅とは、熱田神宮に設けられたお休み処『きよめ茶屋』で売り出されている銘菓。
羽二重餅にこしあんを入れた至ってシンプルなお菓子なんだけど、これがとにかくおいしい。ふにふにもちもちのやわっこいお餅に、優しい甘さのこしあん。まずいわけがない。
タダでさえおいしいこのきよめ餅、なんと栗が入った「栗入りきよめ餅」まであるという。餅、こしあん、栗。大事なことだからもう一回言うけど、まずいわけがない。下手したら死人が出てしまうレベルのおいしさ。これは事件ですよ奥さん。
熱田神宮でおいしいものといえば、外せないのが宮きしめん。ぽっと出名古屋めし代表のエビフライとは違い、江戸時代にはすでに名古屋めしとして成立していた箔付きの名古屋めしだ。
そんなきしめんにまつわるひとつの謎。それは『きしめん』という名前の由来だ。
なにしろ歴史が長いので、はっきりしたことが分からないのだ。ゆえに、きしめんの名前の由来についてはさまざまな憶測が飛び交っている。
もとはキジの肉を具材として入れていたことから『雉麺(きじめん)』から『きしめん』になった説。今の平べったい麺になる前は碁石のように丸い麺だったので『棊子(きし:碁石の意)麺』から『きしめん』になった説。紀州からやってきた麺で『紀州麺』、それがだんだん縮まって『きしめん』になった説。
宮きしめん公式サイトによると、“その由来の説は様々ですが、昔から多くの人に愛されてきた麺であることは間違いありません。”とのこと。
「御託はいいから黙って食べな」ってことかな。
詳しくはコチラ:宮きしめん公式サイト 宮きしめんとは
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こうして、古来よりさまざまな事件の舞台となってきた熱田神宮。神秘の時代はとっくに終わった2012年、ここでまた新たな事件が起きた。長らく禁足地だった『こころの小径(こみち)』が一般公開されたのだ。
『こころの小径』は、熱田神宮の本宮の裏手にある小径。天照大神の荒魂(あらみたま:神様の持ついろんな側面のうち、荒々しく勇猛な一面のこと)を祀る『一之御前(いちのみさき)神社』につながる道とあって、熱田神宮の中でもひときわ神聖な場所だ。
この『こころの小径』への立ち入りが許されるのは、9時~16時のあいだだけ。飲食・ペット同伴・写真撮影・携帯電話での通話は禁止されている。そのくらい特別な神域ってことだ。
神聖な場所でのマナー違反は、新たな事件につながりかねない。
参拝の際はくれぐれもお気をつけあれ。
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