京都からはるか遠くの太宰府へと左遷された菅原道真。怨霊となった彼を天神として祀った神社は全国各地に点在し、「天満宮」や「天神社」などと呼ばれている。
名古屋にも天満宮はいくつかあって、中でも有名な桜天神社、山田天満宮、上野天満宮は『名古屋三大天神』と呼ばれて親しまれている。
今回は、名古屋市から史跡・名勝に指定され『名古屋天神』とも称される、上野天満宮の話をするよ。
(画像引用元:太宰府天満宮で香しい梅を愛で、「梅ヶ枝餅」を食べ歩く“太宰府うめ~旅”│観光・旅行ガイド – ぐるたび)
天神を祀る天満宮の元締めは、言わずと知れた太宰府天満宮だ。
無実の罪を着せられ、京都から九州に左遷された菅原道真。彼が無念のうちに亡くなると、京都では雷や大火、疫病などの災厄が相次いだ。
この事態を「道真の呪い」と考えた人々が安楽寺天満宮(現在の太宰府天満宮)を建て、道真をその祭神として祀ったのが天神信仰の始まりだ。
「天満宮」は本来、天皇や皇族を祀る神社にだけ許される名前だったというから、当時の人たちのビビりようが伺える。
ちなみに、道真の怨霊による最悪の事件『清涼殿落雷事件』が起こったのは天満宮が建立された後。天皇の御殿である清涼殿に雷が直撃し、道真の左遷に関わった人物が次々と亡くなった。
…祀られたくらいで収まる恨みじゃなかったんだろうなあ。
道真が亡くなってからしばらく経った、平安時代中頃の話。かの有名な陰陽師、安倍晴明の一族の一部が京都を追われて名古屋に移り住んだ。その際、同じく京都から追放された菅原道真の境遇を偲んで建てた神社が上野天満宮のはじまりだと言われている。
そんな上野天満宮のご利益は、天神お得意の「学業成就」から「冤罪を晴らす」というピンポイントなものまで。学生さんの合格祈願はもちろん、冤罪にお悩みの方も上野天満宮へどうぞ。
ちなみに、安倍晴明を主祭神とする『名古屋晴明神社』なんていう神社もある。上野天満宮から徒歩10分くらいなので、安倍晴明ファンの方はハシゴするのもいいかも。
『うそ鳥』という鳥がいる。
嘘ではない。うそ鳥は、菅原道真とゆかりのある鳥として親しまれている鳥だ。
むかしむかし、具体的に言うと菅原道真が太宰府に左遷された翌年、902年のこと。
道真が神事を行っていたところ、突如現れたハチの大群が道真と参拝者たちに襲いかかったそうな。
そこにうそ鳥の群れが颯爽とやってきて、無数のハチをたちまちぺろっと食べ尽くしてしまった。こうして人々の平穏は守られ、うそ鳥は道真の使いとして親しまれるに至ったというわけだ。
また、鷽(うそ)という字が學(学の旧字体)と似ていることから、学問の神様である天神と結び付けて考えられたという説もある。
ちなみにうそ鳥ってこんな鳥↓
(画像引用元:鷽とウソ: ケンさんの探鳥記)
天神を祀る大きな神社で行われる『うそ替え神事』は、木彫りで作られたうそ鳥の人形(木うそとも呼ばれる)を取り換えるという行事。「昨年の凶事を今年の吉事に取り(=鳥)替えて、悪いことは嘘(=鷽)にしてしまおう」という、なんとも粋な洒落だ。
この木うそがちょっとかわいいんだよな。神社ごとに個性豊かな木うそが手に入るので、全国の天満宮を巡って木うそを集めるコレクターもいるんだとか。
上野天満宮のうそ替え鳥は(小)1,000円、(中)1,200円、(大)1,500円の3サイズ展開。1月15日と25日、年に2日間のみの授与となっておりますので、うそ鳥コレクターの方はお見逃しなく。
上野天満宮の木うそは全国的に見てもなかなかカワイイと思う。↓
(画像引用元:うそ替え神事のご案内 – 上野天満宮ニュース)
そんな天満宮のマスコット的存在であるうそ鳥のほかにも、天神の使いとして欠かせない動物がいる。牛だ。
神社にお参りに行ったときに、「ご自由にお撫でください」とばかりに座っている牛の石像を見たことはないだろうか。アレだ。
(画像引用元:菅原道真公をお祀りする|名古屋天神 上野天満宮)
「撫で牛」と呼ばれるこの牛さんには、頭を撫でると賢くなるとか、自分の体の痛いところを撫でると治るとかいうご利益がある。
特に痛いところがない場合でも、開運を信じて牛を撫でれば願いが叶ったり、思いもよらない幸運に恵まれたりと言われるすごい牛さんだ。
なぜこのすごい牛さんが天神の使いとされるようになったのか。
それは、菅原道真が生まれた日の干支が乙丑(きのとうし)だったからとか、
菅原道真の遺体を運ぶ途中、とある場所で牛車を引く牛がてこでも動かなくなり、仕方なくそこに道真公を埋葬して現在の太宰府天満宮を建てたからだとか、
天神の異名である「天満(そらみつ)自在天神」から、名前が似ている「大自在天」という白い牛に乗った神様にあやかってだとか、さまざまな説が飛び交っている。
てっきり、道真公を邪魔立てするなにかを牛が派手に食い散らしたのかと思った。うそ鳥くんみたいに。牛さんはとっても穏健派でした。
天神といえば、有名な話にもうひとつ「飛梅伝説」というのがあるのをご存知だろうか。
幼いころから自宅の庭の梅に親しんでいた道真が太宰府に渡ったとき、主人との別れを悲しんだ梅が京都から太宰府まで道真を追って飛んできた…という話だ。
いや梅が飛んできたってどういうことだよ。今完全に頭の中がラピュタのラストシーンなんだけど。菅原道真レベルになると梅にまで恋い慕われてしまうのか、すごいな。
梅を愛し、梅に愛された男、菅原道真……
と、いろいろ話してきて、ちょっと気になったことがある。
天神の使いである『うそ鳥』と『牛』、道真が愛した『梅』、そして名古屋の『上野』天満宮。上野天満宮にまつわるアレコレがだいたい「う」から始まるのは、単なる偶然なんだろうか…?
「う」から始まるといえば:土用の丑の日 – 土用丑は、梅干しうどん食べておとなしくしてよう。
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