開幕まで、あと9日。名古屋の街でもじわじわとアジアパラ競技大会の気配を感じるようになってきた。そんなとき、ふと気になったのが「結局、どれくらいの国と地域から選手が来るんだろう」ということだった。数字を調べてみると、今回の大会には、アジアの45の国と地域が参加する見込みだという。この記事では、公式サイトや日本パラスポーツ協会(JPC)の発表をたどりながら、顔ぶれと規模、そして日本選手団の姿を整理してみた。

まずは一番大事な数字から。大会の公式情報がどこまで出ているのか、確認できた範囲で書いていく。
大会公式サイトには、参加国・地域のページが用意されていて、「アジアの45の国と地域」が参加すると紹介されている。愛知県のアジアパラ競技大会の解説ページでも、同じく45の国と地域とされているし、JPCの大会概要も45か国・地域と載せている。
会期は10月18日の開会式から10月24日の閉会式まで。メインの会場は名古屋市瑞穂公園陸上競技場で、実施されるのは18競技だ。
ここで一つ断っておきたい。私が確認できたのは、あくまで公式サイトなどに「参加する」と掲載されている現時点の数字であり、開幕直前の時点で、各国・地域の最終的な到着人数や出場選手数をまとめた発表は見つけられなかった。だから本文では「見込み」と書き、取れなかった数字は載せないことにした。
数字の話が一段落したところで、次は45の中身、つまりどんな国と地域が名を連ねているのかを見ていこう。

公式サイトに載っている名前を、そのまま追いかけてみた。並べてみると、アジアの広さを改めて実感する。
ここでは分かりやすさのために、私のほうで地理的なまとまりに分けて紹介する(公式の区分ではない)。
西アジアから東南アジアまで、時差も気候も言語も違う地域が一つの会場に集まるのだから、改めて考えると壮観だ。
リストを見ていて目に留まるのが、香港やマカオ、チャイニーズ・タイペイといった名前だ。公式サイトでも「Hong Kong, China」「Macao, China」のように表記されている。この大会が「国・地域」と呼ばれるのは、参加の単位が国そのものではなく、後で説明するNPC(各国・地域のパラリンピック委員会)だからだ。
その仕組みを理解するには、大会を主催するアジアパラリンピック委員会(APC)のことを知っておくと分かりやすい。

アジアパラ競技大会は、ある日突然始まった大会ではない。長い前史がある。
パラスポーツのアジア・太平洋地域の大会のルーツは、1975年に大分で開かれたFESPIC(極東・南太平洋身体障害者スポーツ大会)にさかのぼる。パラサポWEBの解説記事によると、FESPICは9回開催され、今回のアジアパラはその流れをくむ大会だ。そして日本での開催は、今回が初めてになる。
APCの公式の沿革ページによれば、APCの起源は2002年10月30日に韓国の釜山で設立された「アジアパラリンピック評議会」で、2006年に現在の名称になった。当初は東アジア、南アジア、東南アジアの3つの小地域だったが、2004年に中央アジアと西アジアが加わったという。地域ごとにまとめたリストも、この5つの小地域を意識すると読みやすいかもしれない。
大会に出るには、各国・地域のNPCを通じて選手団を送り込む。アジアパラ競技大会の「参加国・地域数」とは、参加するNPCの数のことだと理解しておくと、数字の見え方が変わってくる。日本の場合は、JPCが日本選手団を編成して派遣している。
では、この45という数字は、過去の大会と比べるとどんな位置にあるのだろう。

数字は並べてみて初めて意味が見えてくる。愛知県がまとめている歴代の参加国・地域数を見てみよう。
愛知県の解説ページに載っている、これまでの参加国・地域数は次のとおりだ。
広州から数えて、回を重ねるごとにじわりと増えてきたのが分かる。今回の45は、過去最多となる規模だ。ただ、前回から増えた1つがどの国・地域なのかは、今回の調査では確認できなかった。
前回の杭州大会は、正式名称が「杭州2022アジアパラ競技大会」なのに、実際の開催は2023年10月だった。新型コロナの影響で1年延期されたためで、宮城県の県政ニュースにもその経緯が出ている。同じ記事では、日本代表が金メダル42個を含む計150個のメダルを獲得したことも伝えられている。
国際パラリンピック委員会(IPC)の閉幕報道によると、杭州大会には44の国・地域から約3,020人の選手が参加し、そのうち33の国・地域がメダルを獲得した。これは大会としての新記録だという。参加国の4分の3がメダルを手にしたという事実は、アジアのパラスポーツの裾野が広がっていることを示しているように思う。
一方、今回の名古屋大会については、愛知県が選手団(選手とチーム役員)を3,600〜4,000人としている。選手だけの数と役員を含む数では基準が違うので、杭州の選手数と単純に比べるのは避けたい。確定した選手数は、開幕後の発表を待つのがよさそうだ。
ここからは、ホスト国である日本に目を向けてみたい。9月29日に東京都内で結団式が行われている。
パラフォトの結団式のレポートによると、9月28日時点で日本選手団は総勢455人。内訳は次のとおりだ。
デイリースポーツは、日本が実施される全18競技に選手を送り込むと伝えている。455人という数字には選手以外のスタッフも含まれているので、競技に出る選手の数としては285人と考えるのが正確だ。報道によって「総勢」と「選手」の数え方が違うので、混同しないよう気をつけたい。
団長は、車いすラグビーの元日本代表で、JPC委員長でもある三阪洋行さん。旗手は、パラ陸上の中川もえ選手と、車いすラグビーでパリ大会の金メダリストでもある橋本勝也選手が務める。
マイナビニュースの結団式の記事では、橋本選手が東京大会では味わえなかった有観客での開催を喜び、開会式から盛り上げたいと話したと紹介されている。三阪団長は、日本代表としての責任は負いつつも、それに押しつぶされる必要はない、と選手に呼びかけたそうだ。自国開催という特別な舞台を、勝負の場として楽しもうとしている空気が伝わってくる。
さて、ホームの日本に挑むのは、どんな国々なのだろう。前回の結果から、強豪の顔ぶれを見ておく。
強さの目安として、前回の杭州大会のメダル数が参考になる。ただし、開催国だった中国の数字は特別に大きい点は頭に入れておきたい。
杭州大会のメダル表によると、1位の中国は金214個を含む計521個。2位がイランで金44個の計131個、3位が日本で金42個の計150個だった。日本はイランと金メダル数でわずか2個差だったことになる。
同じ表では、4位が韓国(金30)、5位がインドネシア(金29)、6位がインド(金27)、7位がタイ(金27)、8位がウズベキスタン(金25)と続く。金メダル数が接近しているので、競技ごとに勢力図が入れ替わりやすいのだろう。
もちろん、前回の順位がそのまま今回に当てはまるとは限らない。競技の種目構成も違うし、選手も入れ替わっている。大切なのは、各国が長い時間をかけて競技力を磨いてきたということだ。強豪国という言葉の裏には、選手たちの日々の練習やコーチ、支える人たちの積み重ねがある。
こうして参加国と日本の立ち位置を整理してみると、観戦の楽しみ方も少し変わってくる。
最後に、これは私個人の実感として。大会に足を運ぶ前に、少しだけ視野を広げてみたい。
日本の選手を応援するのは楽しい。それに加えて、名前しか知らなかった国の選手が、世界記録に迫る走りや泳ぎを見せる瞬間に立ち会えるのは、大きな大会ならではの贅沢だ。パラアスリートは、それぞれの身体の特性を生かして、極限まで技を磨いている競技者だ。国籍を超えて「すごい」と声が出るプレーに出会えるはずだ。
競技会場は名古屋市内だけでなく、岡崎、一宮、豊橋、豊田、刈谷など愛知県内各地に点在している(JPCの大会概要による)。名古屋で働く私たちにとって、仕事帰りや休日にふらっと足を運べる距離に、アジアのトップ選手が集まる。そう思うと、なんだかわくわくしてくる。
ここまで読んで、まだ気になる点が残っている方のために、よくある疑問を整理しておく。
参加国・地域に関して、よく聞かれそうな疑問をまとめた。
公式サイトや愛知県、JPCの情報では、アジアの45の国と地域が参加するとされている。ただし開幕前の時点なので、「見込み」の数字だと考えておくのが安全だ。最新の情報は大会公式サイトで確認してほしい。
アジアパラリンピック委員会(APC)に加盟するNPC(各国・地域のパラリンピック委員会)が参加の単位になる。そのため、国連に加盟する「国」だけでなく、香港やマカオ、チャイニーズ・タイペイのような地域も、NPCとして名を連ねている。
9月28日時点で、日本選手団は総勢455人、そのうち選手は285人と報じられている。選手以外に、競技パートナーや各団体のスタッフ、本部スタッフが含まれる。
愛知県の資料によると、杭州大会は44の国・地域で、今回は45。1つ増える見込みだ。なお、増えたのがどの国・地域かまでは確認できなかった。
45の国と地域が、10月18日に向けて、それぞれの空と海を越えて名古屋に集まってくる。数字を調べながら、私は何度も「アジアって本当に広くて、本当に多様だ」と思った。そして、その一つひとつの国と地域に、パラスポーツに向き合ってきた選手と、支える人たちがいる。
開幕後には、より詳しい参加人数やメダルの行方が伝えられるはずだ。この記事も、確定した情報が出たら見直していきたい。まずは、9日後。競技場で会おう。