移動時間に音楽を聴く人は多いと思う。僕も基本的に、電車に乗るときなんかはずっと音楽を聴いている。
高校生のとき、僕は自宅から自転車で学校に通っていた。胸ポケットに突っ込んだ携帯から音楽を流してノリノリで歌いながら、片道40分の道を自転車で走る。それが僕の通学スタイルであり、毎日の楽しみでもあった。
しかしある日、親からこの通学スタイルへの異議申し立てがあった。
別に僕の歌がうるさいとか、下手だとか、選曲のセンスが皆無とかそういうことではなかった。それも多少はあったのかもしれないが、僕の親が主に心配していたのは「胸ポケットに携帯を入れていたら、電磁波が心臓に悪影響を与えるんじゃないか」ということだった。
現代ではすっかり身近なものとなった電磁波。しかし僕の親のように「実は体に悪いんじゃないか」という不安が拭えない…という方も多いのではなかろうか。気持ちは分かる。目に見えないものが恐ろしいのは仕方のないことだ。
ちなみに僕は結局、あの通学スタイルを曲げることはなかった。親の心子知らずとはまさにこのことである。
何が「気持ちは分かる」だ。1ミリも分かってないじゃないか。
だってガラケーだからイヤホン使えなかったんだもん。
結論から言うと、「全く悪くない」とは言い切れない。
たとえば人間が高周波(100kHz以上)の強い電波を浴びると体温が上昇したり、逆に低周波(100kHz以下)の強い電波を浴びると体内に電流が発生してビリビリしたりと、なにかしら影響は現れるようだ。
(電波:電磁波のうち周波数が300万MHz以下の周波数のもの)
ただし、これはかなり強い電波を浴びたときの話だ。携帯電話のように、現在一般的に用いられている電子機器から出る電波はかなり微弱なもの。そのため、電子機器が人体に与える悪影響は“いまのところ”ほぼ皆無だといわれている。
参考:総務省 「電波の人体に対する影響」
そもそも電磁波って何者なのかっていうと、空間の電場と磁場の変化によって形成される波のこと。可視光線(いわゆる「光」)や赤外線、紫外線なども電磁波だ。
その電磁波の中でも、核爆発や雷などによって発生するパルス(脈拍)状の電磁波を電磁パルスという。電磁パルスはかなり強力な電磁波で、電子機器に障害を引き起こしたり、場合によっては人体にダメージを与えたりすることもあるという。
そんな恐ろしい力を持つ電磁パルスだけど、ただ有害なだけかというとそうではない。理学療法の分野では、電気療法の一環として取り入れられていたりする。
実際には音なんて鳴っていないのに、耳の中で音が鳴っているように感じる耳鳴り。重度になると不眠症やうつ病にまで発展しかねない厄介な病気だ。
その原因は、脳の中の聴覚を司る部分が異常に活性化すること。
ここで登場するのが電磁パルスだ。電磁パルスには脳の活動を抑える効果があるため、異常に活性化した領域に電磁パルスを照射することで耳鳴りを止めることができるのだという。
従来の薬による対症療法に代わる、新たな耳鳴りの治療法として注目されている。
一度習慣になってしまうとなかなかやめられない煙草。ありとあらゆる手段を使って何度も禁煙にチャレンジしては、そのたびに挫折してきた人も多いのではないだろうか。
そんな禁煙の常識をひっくり返すような実験が、イスラエルで行われていた。
その実験というのは、ニコチン中毒に関わりのある前頭前野皮質と島皮質という領域に電磁パルスを照射するというもの。結果、なんと被験者の半数近くが禁煙に成功したというから驚きだ。
電磁パルスによる禁煙治療が一般的になれば、やめたいのにやめられないニコチン無限ループからの解脱がもっと楽になるかも。
参考:これでやめられる?脳に高周波電磁パルスを照射するだけの簡単禁煙法
話はちょっと変わるけど、電気風呂ってご存じだろうか。
電極を備えた浴槽を用いて、人体に害がない程度の電流を流したお風呂のことだ。筋肉痛や肩こりの改善・リウマチによる関節痛や神経痛の軽減などの効能があるらしい。
僕も小さい頃に銭湯で電気風呂に出会い、つま先だけ入れてみたことがある。
衝撃だった。
お湯に触れた瞬間ビリッと来て、本能的に足をひっこめた。あれに肩まで浸かるのはなかなかに勇気がいると思う。慣れたら気持ちいいらしいけど。
安全だって言われてても、やっぱり怖いものは怖い。だって見えないし、感電したら死ぬし。
これはなんにでも言えることだけど、必要以上にビビらないためには正しい知識を身につけることが必要だ。電波も電磁波も、うまく使えば生活を豊かにする手段になる。
そうは言ったってやっぱり不安だわって場合は、電磁波から身を守るための各種グッズがあちこちから出ているので、導入してみるのも手だ。スマホの電磁波吸収シートとか。
僕も、次また電気風呂に出会ったら、今度は肩まで浸かってみよう。
大丈夫。こわくないよ。電気はともだち。
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