テレワークが当たり前になった今、「自宅の作業環境にかかったお金、経費にできるんだろうか?」と気になっている個人事業主の方は多いのではないでしょうか。通信費や電気代、家賃まで、暮らしと仕事が入り混じる分、判断に迷う場面も増えてきます。ここでは、経費として計上する際の基本的な考え方から一緒に整理していきましょう。

テレワークが当たり前になった今、「自宅の作業環境にかかったお金、経費にできるんだろうか?」と気になっている個人事業主の方は多いのではないでしょうか。ここでは、経費として計上する際の基本的な考え方から一緒に整理していきましょう。
経費計上を考えるときにまず押さえておきたいのが、「そもそも経費とは何か」という基本の部分です。ここを理解しておくと、この先の判断がぐっとラクになります。
個人事業主の経費(必要経費)は、基本的に「事業を行う上で必要になった支出かどうか」で判断されます。売上を得るために直接必要な支出であることが大前提であり、プライベートな支出とはしっかり分けて考える必要があります。国税庁のタックスアンサーでも必要経費についての基本的な考え方が示されていますので、判断に迷ったときは一度目を通しておくと安心です(出典:国税庁「No.2210 必要経費の知識」)。会社員時代のように「福利厚生費だから」といった感覚で何でも経費にできるわけではなく、あくまで自分の事業活動と結びついているかどうかが判断の出発点になる、と覚えておくとよいでしょう。
テレワークの場合、自宅というプライベート空間で仕事をするため、「仕事用」と「プライベート用」の支出が混ざりやすいのが悩ましいところです。たとえば同じインターネット回線を家族の動画視聴にも仕事にも使っている、といったケースは珍しくありません。こうした仕事とプライベートが混在する支出のことを「家事関連費」と呼び、そのままでは全額を経費にすることはできません。次の章で紹介する「家事按分」という考え方を使って、事業で使った分だけを切り出す必要があります。
家事関連費をどう扱うかがわかると、経費計上の解像度がぐっと上がります。ここからは、テレワークの経費計上で欠かせない「家事按分」について詳しく見ていきましょう。
家事按分とは、自宅の家賃や光熱費のように仕事とプライベートの両方にまたがる支出について、「事業のために使った割合」を合理的に見積もり、その部分だけを必要経費として計上する考え方です。全額を経費にできるわけではなく、あくまで「事業で使った分」に限られる点は忘れないようにしましょう。
按分割合に「これが正解」という決まった数字があるわけではなく、実態に即した合理的な基準で算出することが求められます。代表的な考え方には、次のようなものがあります。
最終的にどの基準を使うかは、自分の働き方の実態に合わせて説明できるようにしておくことが大切です。この割合の考え方に不安がある場合は、自己判断だけで進めず、税理士や税務署に確認することを強くおすすめします。

基本ルールがわかったところで、実際にどんな費目が経費になり得るのか、具体的に見ていきましょう。ここで紹介するのはあくまで一般的な考え方なので、自分のケースに当てはめる際は慎重に判断してくださいね。
テレワークにまず欠かせないのが通信環境です。仕事における必要性が特にわかりやすい費目でもあるので、最初に整理しておきましょう。
自宅のインターネット回線やスマートフォンの通信費は、仕事の連絡や資料のやり取り、オンライン会議などに使っている場合、家事按分の対象になり得る費目です。プライベートの利用と混在している場合は、利用時間や利用日数などをもとに、事業で使った割合を見積もることになります。オンライン会議の頻度が多い月とそうでない月で通信費の使い方に差が出ることもあるため、按分割合は一度決めたら終わりではなく、働き方の変化に合わせて見直す視点も持っておきたいところです。
仕事専用として使っているパソコンやモニター、プリンターなどの周辺機器は、事業のための支出として経費になりやすい費目です。一方で、家族と共用しているパソコンなどは、通信費と同様に按分の考え方が必要になる場合があります。購入金額が大きいものは「消耗品費」ではなく「減価償却」の対象になることもあるため、金額や耐用年数によって処理方法が変わる点にも注意が必要です。
自宅で仕事をする以上、避けて通れないのが光熱費の存在です。ここも按分の考え方がしっかり生きてくる領域です。
パソコンやモニター、照明、エアコンなど、仕事のために使う電力は電気代の一部として経費計上できる可能性があります。ただし、電気代のすべてが仕事用というわけではないため、こちらも使用時間や部屋の面積などをもとにした按分計算が基本になります。水道代については業種によって経費として認められにくいケースもあるため、迷ったら専門家に相談するのが安心です。夏場や冬場はエアコンの使用時間が増えて電気代がかさみやすいなど、季節によって仕事とプライベートの使用比率が変わることも考えられますので、年間を通して一律の割合にこだわりすぎず、実態に合わせて柔軟に見直す姿勢も大切にしたいですね。
在宅ワークの経費というと、多くの方が気になるのが住まいにかかる費用ではないでしょうか。賃貸か持ち家かによって考え方が少し変わってきます。
賃貸物件に住んでいる場合、家賃のうち仕事スペースとして使っている部分を、床面積の割合などをもとに按分して経費にできる可能性があります。「自宅全体の面積に対して、仕事部屋が何割を占めているか」を基準にする方法が一般的な考え方として紹介されることが多いです。
持ち家の場合は、住宅ローンの金利部分や固定資産税、火災保険料などが按分の対象として検討されることがあります。ただし住宅ローン控除など他の税制優遇と絡む場合もあり、持ち家ならではの複雑さがあるため、自己判断で処理を進めるのではなく、税理士や税務署に確認したうえで進めることを強くおすすめします。「経費にできそうだから」といって安易に按分してしまうと、後から住宅ローン控除の扱いとの整合性がとれなくなることもあるので、持ち家で在宅ワークをしている方ほど、早めに専門家へ相談しておくと気持ちよく確定申告を迎えられるはずです。

経費にできそうな費目が見えてきたら、次に気になるのが確定申告での扱い方です。日頃の準備次第で、申告時の負担も大きく変わってきます。
経費として計上する以上、「なぜその金額になったのか」を説明できる状態にしておくことが大切です。まずは日々の記録づけから見直してみましょう。
領収書やレシートはもちろん、通信費や電気代の場合は請求書・明細も保管しておきましょう。また、按分の根拠となる作業時間や作業日数についても、簡単なメモや記録を残しておくと、後から見返したときに安心です。普段からこんな記録を残しておくと、按分割合の説明がスムーズになります。
記録が揃っていても、それを「説明できる形」にしておかないと意味がありません。ここでは税務調査を見据えた準備について触れておきます。
家事按分は、按分の根拠がはっきりしていることが重要です。「なぜその割合にしたのか」を第三者に聞かれても答えられるようにしておくことが、安心して経費計上を続けるコツといえます。数値や制度の細かい取り扱いは個々の状況によって異なるため、具体的な処理に迷った場合は、必ず税理士や税務署に確認するようにしてください。日頃から「聞かれたら答えられる」状態を意識しておくだけで、確定申告の時期になって慌てて資料を探し回るようなことも少なくなるはずです。
ここまでの内容を踏まえて、テレワークの経費計上でよく聞かれる疑問についてもお答えしていきます。
按分割合について法律で一律に定められた数字があるわけではなく、事業主自身が実態に即して合理的に算出するのが基本的な考え方です。判断に迷う場合は、自己判断だけで進めず税理士や税務署に相談することをおすすめします。
まずは「事業のために直接必要な支出かどうか」を基準に考えてみましょう。それでも判断が難しい場合は、無理に自己判断せず、税理士や所轄の税務署に確認するのが確実です。
できるだけ早いタイミングから記録を残しておくのがおすすめです。確定申告の直前になってから慌てて振り返るよりも、日頃から作業時間や利用状況をメモしておくほうが、按分の根拠を説明しやすくなります。
テレワークにかかる支出は、通信費や電気代、家賃など、暮らしと仕事が密接に絡み合っている分、経費にできるかどうかの判断に迷いやすい領域です。とはいえ、「事業のために使った部分を、合理的な基準で按分する」という基本の考え方さえ押さえておけば、判断の軸はぶれにくくなります。
今回紹介した内容はあくまで一般的な考え方の整理であり、実際の按分割合や経費計上の可否は、事業内容や働き方によって変わってきます。具体的な数値や処理方法については、必ず税理士や税務署に確認しながら進めるようにしてください。日々の記録づけを習慣にしながら、無理なく、そして安心してテレワークの経費計上と確定申告に向き合っていきましょう。